胡蝶蘭は日が暮れてから美しい。壁に落ちる影まで飾る照明の置き方

夜の部屋で白い胡蝶蘭を斜め下から照らし、壁に花の影を映したアイキャッチ画像

昼間はあんなに華やかだった胡蝶蘭が、夜になると急に平たく見える。
そう感じたことはありませんか。
こんにちは、元フラワーショップ店長で空間デザイナーのHanaです。
原因はたいてい花ではなく、部屋の照明にあります。
小さなライトを1つ、斜め横から当ててみてください。
この記事では、光の向きと色、壁との距離の決め方に加えて、株を弱らせない消灯の目安までお伝えします。

夜の胡蝶蘭が平たく見えるのは、真上からの光のせいです

天井の照明だけでは、花の立体感が消えてしまいます

天井のシーリングライトは、部屋全体をむらなく明るくするための照明です。
生活するには便利なのですが、胡蝶蘭にとっては少し困った光でもあります。

真上から広く降りてくる光の下では、花の重なりにできるはずの影が薄くなります。
すると、丸みのある花びらが白い面のように見えて、昼間の奥行きが消えてしまうんです。
シーリングライトの光が葉に反射して、ツヤばかりが目立つこともあります。

店長をしていた頃、閉店後に店の照明を半分落とすと、同じ株がまるで別の花のように見えて驚いたことがありました。
花が変わったのではなく、光の当たり方が変わっただけです。
空間の仕事を始めてからは、胡蝶蘭を飾るお宅で真っ先に照明の位置を確認するようになりました。

部屋を少し暗くするほうが、花は引き立ちます

パナソニックの照明設計資料「良い照明の要件」では、輝度分布があまりに均一だと平板で陰気な感じになると説明されています。
雰囲気を重視する照明なら、明るさにある程度の差があるほうが単調にならないそうです。
応接室や食堂の例として、テーブルの上を周辺の3〜5倍の照度にすると中心感が出る、という記述もあります。

胡蝶蘭にも同じ考え方が使えます。
天井の照明を消すか調光で落として、花の周りだけを明るくするだけで十分です。
白い花は光を受けやすいので、周りが少し暗くなるだけで、ふわっと浮かび上がって見えますよ。

光の向きを変えると、花の表情はここまで変わります

最初に試してほしいのは、斜め横からの光です

迷ったら、花の高さより少し低い位置から、斜め45度くらいの角度で照らしてみてください。
花びらの丸みに沿って明暗が生まれ、壁には花の輪郭が斜めに落ちます。
失敗が少ないうえに、部屋で過ごしながら眺めても光源が目に入りにくい置き方です。

ライトは花に向けたまま、左右に10cmずつ動かしてみましょう。
影がいちばんきれいに伸びる位置は株ごとに違うので、部屋を暗くして、実際に見ながら決めるのがいちばん早いです。

下からの光は、影を大きく伸ばします

床やチェストの上にライトを置き、下から照らすと、影は壁の上へ向かって大きく伸びます。
花茎のアーチが天井に届きそうな勢いで映るので、来客のある夜にはとても喜ばれます。
ただ、葉の裏や鉢の縁まで強く照らされるため、毎晩眺めるには少し落ち着かないかもしれません。

後ろからの光は、花びらを透かします

株の背後に小さな光を隠すと、白い花びらが透けて、輪郭がほのかに光ります。
影を楽しむのではなく、花そのものの薄さを見せる置き方です。
ライト本体が正面から見えないように、鉢の後ろや花瓶の陰へ隠してください。

光の向きごとの違いをまとめると、次のようになります。

光の向き花の見え方壁の影向いている場面
斜め横丸みと奥行きが出る斜めに落ちる毎日の夜
下迫力が出る上へ大きく伸びる来客のある夜
後ろ花びらが透けるほとんど出ない静かに眺めたい夜
真上平たく見えやすい鉢の周りに落ちる避けたい置き方

壁に落ちる影をきれいに出すには

株と壁の距離で、影の表情を決めます

影の印象を大きく左右するのは、株と壁の距離です。
株を壁に近づけるほど、影は実物に近い大きさで輪郭もくっきりします。
反対に壁から離すと、影は大きくなり、輪郭はやわらかくぼやけていきます。

まずは株を壁から30cmほど離した位置で試してみてください。
そこから前後に動かして、花びらの形が読み取れるくらいの濃さを探します。
ライトの大きさも影に関係していて、シェードで光が広がる照明より、光の出口が小さいスポットライトのほうが輪郭は鋭くなります。

壁は白くて光沢のない面を選びます

影がいちばん映えるのは、白っぽくて光沢のない壁です。
パナソニックの間接照明の設計資料でも、光沢のある反射面は映り込みが出やすいので、マットな素材を選ぶよう書かれています。
ツヤのある家具の扉や大きなガラス面を背にすると、影より先にライトの光が映り込んでしまいます。

柄のある壁紙やポスターの前では、影が模様に紛れてしまいます。
そういうお部屋では、壁を使わずに斜め横の光で花の立体感を楽しむ方向に切り替えたほうがうまくいきますよ。

影に映るものを片づけます

影に出るのは輪郭だけなので、昼間は気にならないものが意外と目立ちます。
点灯する前に、次のものを確認してみてください。

  • ラッピングやリボン、立札
  • 花茎を留めている太いクリップや、まっすぐな支柱
  • 株の隣に置いた小物や、背の高い雑貨

ラッピングの外し方や鉢カバーの選び方は、「胡蝶蘭をおしゃれに飾るなら?プロが教える鉢カバーと配置術」にまとめています。

もう1つ気をつけたいのが、株のボリュームです。
お祝いでいただく大輪の3本立ちは、花が重なりあって影が大きな塊になりがちです。
鉢を少しずつ回して、花茎のすき間が見える向きを探してみてください。
輪郭の美しさでいえば、1本立ちやミディ胡蝶蘭のほうが影はきれいに出ます。

ライトは、色と器具の大きさで選びます

光の色で、白い花の見え方が変わります

同じ白い胡蝶蘭でも、電球の色によって印象はかなり変わります。
パッケージの「電球色」「温白色」「昼白色」という表記で選んでみてください。
色温度はメーカーや製品で多少前後しますが、目安は次のとおりです。

光の色色温度の目安白い花の見え方おすすめの場所
電球色2700K前後クリームがかって温かい寝室、くつろぐリビング
温白色3500K前後白さと温かみの中間迷ったときのリビング
昼白色5000K前後白がそのまま、葉の緑もはっきり仕事部屋、書斎

私のいちばんのおすすめは電球色です。
夜の部屋に白い光を足すと、そこだけ事務的な雰囲気になってしまうことがあるからです。
ピンクの胡蝶蘭は色がくすまないか、一度点灯して確かめておくと安心です。
パッケージに演色性(Ra)の数値があれば、80以上、できれば90前後を選ぶと花の色が自然に見えます。

器具は、小さなもので十分です

専用の照明を買い足す必要はありません。
お手持ちのデスクライトでも、向きが変えられれば試せます。
新しく用意するなら、次のようなものが扱いやすいです。

  • クリップ式のスポットライト(棚に挟めて角度を変えやすい)
  • 首の動く小型のテーブルライト(置き場所を選ばない)
  • 充電式の小さなライト(コードが見えないので後ろからの光に便利)

調光機能つきの器具に電球を入れる場合は、調光器対応のLED電球を選んでください。
日本照明工業会の注意資料によると、適合しない電球をつなぐと、短寿命や発煙のおそれがあります。

夜に照らすときに守りたいこと

飾るための光は、寝る前に消します

ここがいちばんお伝えしたいところです。
日本植物生理学会のQ&A「コチョウランってCAM植物?」によると、成熟したコチョウランは夜間に気孔を開いて二酸化炭素を吸収し、昼間の光合成に使っています。
つまり胡蝶蘭にとって夜は、ただ休んでいる時間ではないんです。

園芸情報サイトのBloom Noteは「胡蝶蘭は直射日光NG!最適な置き場所と日照環境を徹底解説」で、夜に10〜12時間ほどの暗い時間を確保するよう勧めています。
夜間も照明がつきっぱなしの場所なら、暗い場所へ移す必要があるとも書かれています。

ただし、この時間はあくまで栽培の目安です。
家庭のライトをどのくらいの明るさまでなら夜に当ててよいのか、はっきり示した基準は私が調べた範囲では見つかりませんでした。
そのため私は、点灯は日暮れから2〜3時間までにして、タイマーつきのコンセントで自動的に消すようにしています。
夜通し明るいオフィスの受付などに飾る場合は、特に気をつけてください。

ライトは花から30cmほど離します

LEDは白熱電球に比べて光線の熱が少ないものの、器具本体は点灯中に温かくなります。
花びらや葉に触れる距離では乾燥や傷みの原因になりかねないので、花から30cmほど離して置きましょう。
白熱電球やハロゲン電球は熱が強いので、この用途にはおすすめしません。

設置したら、次の点も確認しておくと安心です。

  • 水やりのときに水がかからない位置か
  • コードに足を引っかけて株ごと倒す心配がないか
  • 点灯中のライトに、小さなお子さんやペットの手が届かないか

夜の窓辺は、見た目より冷えています

夜の窓ガラスは鏡のように花を映してくれるので、つい窓辺に飾りたくなります。
けれどもこれからの季節、窓の近くは夜間に冷気が当たりやすい場所です。
Bloom Noteの同じ記事でも、窓際は冬場や夜間に冷気が当たりやすいので、場所を変える必要があるとされています。

日が暮れたら窓から離れた場所へ移すか、最初から部屋の内側の壁を背にして飾ってください。
暖房の風が直接当たる位置も、花や葉を傷めるので避けましょう。
影を映す壁を部屋の内側で探せば、冷えの心配も一緒に減らせます。

まとめ

夜の胡蝶蘭が平たく見えるときは、天井の照明を落として、小さなライトを斜め横から当ててみてください。
それだけで花の丸みが戻り、壁には昼間にはなかった影が生まれます。

株を壁から30cmほど離した位置を出発点に、ライトと鉢を少しずつ動かして、好きな影を探してみましょう。
光の色に迷ったら電球色から試すのがおすすめです。
そして、飾るための光は寝る前に消してあげてくださいね。

今夜はぜひ、部屋の明かりを1つ消して、胡蝶蘭の前に座ってみてください。
昼間とは違う一鉢に、きっと会えますよ。

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